チーム医療の定義

われわれはチーム医療という言葉を何気なく用いている。それほどに定着した言葉であることに間違いなさそうなのだが、人それぞれが異なった意味合いで用いているようにも感ずる。日常会話においてはそのような意味の違いはさしたる問題ではないのだが、こと医療経営の分野に話が及ぶと、そうもいってはいられない。資源の限られた医療提供組織を如何に効果的かつ効率的に運営するかという問題を解決するためには、その構成員である医療従事者に共通の認識や大まかな方向付けをしなければならないからである。目の前の患者を如何に効果的かつ効率的に治療するか。それは医療経営学のテーマなのだが、そのための基礎的概念が“チーム医療”なのである。

筆者は日本医師会からチーム医療に対する考え方を示すよう依頼を受けた。現代のわが国における医療の問題点、それはすなわち医療を提供している医療機関の経営問題なのだが、を指摘するに先立って、チーム医療について以下のように定義した。これが筆者の医療経営論の始まりであり終わりでもある。

チーム医療の定義   “ 複数の主体が協働して行う医療のあり様 ”

* “複数の主体” : 医師、看護師、薬剤師等といった医療に関連する職種のほか、診療所、病院、大学、地方自治体も医療提供の主体すなわちチーム医療の構成員となる。

* “協働” : それぞれの主体は核となる能力を有していると同時に、自立性を有しており相互に作用しながら秩序だって行動すること。

* “医療” : 医学ではない。地域性や組織風土といった文化的要素を基盤にもちながら、一人ひとりの患者の有する心身の問題を解決する専門的な行為。

* “あり様” : 限られた資源を効果的かつ効率的に活用することを目的として創発的に形成される組織であるため、現実の組織は多様かつ複雑なあり様となる。

これに対し、厚労省の“チーム医療の推進に関する検討会”の報告書(案)では、

○チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。

とある。“一般的に理解されている”とのことだが、初めて目にする定義である。また、チーム医療の主体が医療スタッフに限られている点で、医療のダイナミズムを表現しきれていないと思うし、業務について分担と連携・補完という異なった概念を用いることで複雑な論理構造となっている。

果たして、チーム医療に関する議論は混沌とするばかりで、糸口は見出せていないようである。

(谷田 一久)